「ビジネス書疲れ」を起こしていませんか?
今までにたくさんのビジネス書を読んできた。
時間管理術や勉強術、ロジカルシンキングにマインドマップ、目標達成の本や成功哲学の本。
世界的に有名な名著と呼ばれる本から最新のベストセラーまで。
そして、もちろん読書術に関する本も。
速読や多読、精読から遅読までたくさんの読み方を実践してきた。
有名な著者は皆「本を読め、本を読め」と言っているから何十冊、何百冊も読んできたけど、一向に人生は変わらない。
結局、ビジネス書を読んだだけで終わっている。
実際の仕事で活かすことができていない。
積ん読が多く、たくさんの本が本棚の肥やしになっている。
背表紙を見ても、何が書いてあったか、どんな本だったか思い出せない。
重要なところを抜き書きした読書メモは全然読んでいない。
でも、まだ何か新しい情報は無いかと書店に立ち寄っては、また別な本を買ってしまう。
そして、貴重な時間とお金を失ってしまう。
こんな状態を「ビジネス書ジプシー」と呼ぶそうです。
ジプシー (gypsy, gipsy) は、一般にはヨーロッパで生活している移動型民族を指す民族名。転じて、様々な地域や団体を渡り歩く者を比喩する言葉ともなっている。外名であり、当人らの自称ではない。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
つまり、「ビジネス書ジプシー」とは、最新のスキルや新しい情報がないかと、たくさんのビジネス書を渡り歩くように次から次に手を出してしまうことを言います。
そんな「もったいない読書」から卒業しませんか?
「もったいない読書」から「学ぶことが楽しい読書」へどうすれば変わることができるか教えてくれる本を紹介します。
一冊からもっと学べるエモーショナル・リーディングのすすめ
「また、新しい読書術か」と思われるかもしれません。
しかし、本書はいままでの読書術とは違うアプローチで本の読み方を紹介してくれます。
それが、「エモーショナル・リーディング」です。
エモーショナルとは、「感情」のことです。
直訳すれば、「感情的な読書術」です。
もっと詳しく言うと、著者は「肯定的な感情で本と向き合い、ポジティブな感情で著者のメッセージを受け取る読書術」と言っています。
著者の矢嶋雅弘さんは、ナレーター・ラジオパーソナリティーであり、Podcasting番組「新刊ラジオ」のパーソナリティーとして、いままで1700冊以上の本を紹介してきた方です。
著者自身が仕事でたくさんの本を紹介してきた経験から、どのような本の読み方をすれば、楽しく本を読め、本を理解でき、自分を成長させてくれるかを教えてくれます。
- テクニックだけを拾い読みするのは、もったいない読書である
- 読書は著者との「対話」である
- 感情をメモする
- 本の魅力を人に伝える
テクニックだけを拾い読みするのは、「もったいない読書」である
最近の本はとても読みやすくしてあります。
文字が大きい、目次が詳しい、見出しがある、重要なところが太字である、各章の最後まとめがあるなど。
10年前の本に比べると圧倒的に読みやすくしてあります。
本を読む人が少なくなったことから本が売れないため、出版社はあの手この手を使って、読者に本を買ってもらおうとします。
そのため、難解な本の入門書、図解版、果てにはマンガ版まで、かなり易しくしてあります。
読者が手に取りやすくなった一方で、そんなに考えなくても、どこが大切なのかとても分かりやすくまとめられています。
本が結論まで案内してくれて、読者はそれに従って、文字を目で追うだけです。
その結果、本に書いてある結論やテクニックだけを拾うだけの読み方になってしまいます。
そんな、本にスムーズに読まされている読書、つまり、受動的に知識だけを取り込む読書を「もったいない読書」と著者は言っています。
では、どうすれば「もったいない読書」から抜け出せるのでしょうか。
読書は著者との「対話」である
目から情報を得るだけではなく、能動的かつ肯定的な姿勢で臨む必要があります。
読書は本を通した著者との「対話」である(P.23)
受け身で情報だけを得るのではなく、著者と対話することでより理解を深めていきます。
結論だけを見るのではなく、なぜ著者はその主張をしているのか、どうしてその結論に至ったのか、なぜこんなことを言っているのか。
「著者の原体験」を注目することこそが重要になってきます。
例として、ビジネス書でよくあるのが、「感謝しなさい」ということです。
100人の著者がいて、100人みんなが「感謝しなさい」と言っていても、なぜそんなことを言うのか、それぞれの著者の理由である「○○だから、感謝しなさい」の「○○だから」は100通りあります。
その理由を著者の原体験を通じて理解する必要があるということ。
同じ「経営者」という肩書きでもそれまでの人生は違います。
家族とのできごとなのか、会社経営に行き詰まったときに助けてくれた従業員なのか、それとも師匠(メンター)なのか。
それぞれが「感謝する」という結論に至った経緯は、似ていても全く同じ経験からきていることはありません。
それを原体験を通じて理解せず、「感謝だけすればよい」と捉えるのは、非常にもったいないです。
ですから読書することで著者の原体験を擬似体験する必要があるのです。
そのためには、著者と対話することです。
そして、著者の言うことを肯定するクセをつけることです。
感情をメモする
「セミの成虫の寿命は一週間程度と言われていますが、ほとんどのセミは、本当は一ヶ月も生きられるのです。」(P.86)
この一文を読んでどんな感情を抱いたでしょうか。
ぼくは最初に読んだときに「えっ嘘でしょ?!」って思いました。
本を読んでいると何かしら、感情を抱くはずです。
この感情を置き去りにしないのが、エモーショナル・リーディングの核となる部分です。
肯定的に対話することできっと何かを感じます。
主には、「賞賛」「ツッコミ」「共感」があります。
その感情をノートに手書きでメモしていきます。
もし、メモを取ることが面倒臭いと感じるのであれば、効率だけを重視したもったいない読書になる危険があります。
情報を得ることだけに集中せず、一旦、自分の感情に向き合ってみることです。
本の魅力を人に伝える
読書後のアウトプットと言えば、本に書いてあることを実践することがよく挙げられます。
一冊の本からどれだけ、具体的な行動、習慣を取り入れることができるか。
いかにそれが重要か。それを勧めている本は多いです。
しかし、本書におけるアウトプットとは、読んだ本の内容を人に伝えることです。
「誰かにその本の面白さを伝えるためのアウトプット」をしていくこと。
「ひと言で言うとどんな本でしょうか?」
それを人に伝えることができますか?
テクニックばかり学んで、多くの項目を抜き出すのはいいですが、この質問に答えられないようでは、もったいない読書です。
なぜなら理解できていないからです。単に「おもしろかった」だけではいけません。
人に伝える前提で読むとなると本の内容を理解しないといけません。
理解しようとしたら、著者は何が言いたいのか、重要なポイントはどこか、自分が感銘を受けたのはどこかなど、たくさん考える必要があります。
ただ、具体的なテクニックだけをつまみ食いするだけでは絶対に理解できません。
まとめ
ビジネス書は楽しいものである(P.251)
本来、思考するために読書はするものです。
しかし、最近は情報を得るためのものに留まっているため、それが考えを奪うことに繋がっています。
情報を得るだけの読書は無機質であり、楽しいとは言えません。
そこで大切にしたいのが、著者との「対話」であり、肯定的な感情で本を読むことです。
人間は感情の動物ですから、感情と結びついた方が記録に残りやすく、理解しやすくなります。
また経営学の父ピーター・F・ドラッカーが「知識労働者は自らが教えるときに最もよく学ぶという事実がある」と言っています。
だからこそ、人に伝える前提で本を読むことが大切なのではないでしょうか。
今日の出来事を話すように、本の話をする。
小説を読むときに主人公に感情移入しませんか?
だからハラハラ、ドキドキして楽しく読めるのではないでしょうか。
それと同じように、著者の原体験を擬似体験することで、「こんなときは自分だったらどうするか」まで考えることができます。
そこには感情が伴い、読書が楽しくなってきます。
本のプロセスにも目を向けることを重視している本は少ないです。
いままでの「実践しましょう」というテクニックありきの読書術は、水面の上澄みだけを掬うような本の読み方です。
そうではなく、水底からすくい上げるような読み方が「エモーショナル・リーディング」です。
誤ってはいけないのは、本の読み方に正解や不正解があるわけではありません。
本は好きに読めばいいんです。
しかし、本に読まされる読み方をして、ビジネス書疲れを起こし、本を読むことが楽しくなくなって、読書が嫌いになっては本末転倒です。
そんな人はこの本を手に取ってみてはいかがでしょうか。
ちなみに、読書会に参加するのも、絶好の機会です。