『夢をかなえるゾウ2』を読みました。
この本は大人気シリーズ「夢をかなえるゾウ」の第2作目で、売れないお笑い芸人のもとにゾウの姿をした神様「ガネーシャ」が舞い降り、コンビを組んでお笑いのコント大会で優勝を目指す物語です。
今回はガネーシャ以外にも貧乏神や釈迦、死神まで登場するとても騒がしい物語でした。
いつもふざけているガネーシャなのでお笑いがメインかと思いきや、お金や才能、恋愛のことまで幅広くテーマを扱っていて、多くの「教え」が詰め込まれています。
印象に残った部分を紹介します。
才能を超えて成長するための方法『夢をかなえるゾウ2』水野敬也著
一番怖いのは、将来が見えてしまうこと
この本で一番印象に残ったフレーズが冒頭に登場します。
主人公のお笑い芸人、西野勤太郎が大学を卒業するときにお笑いの道に進むべきか就職するべきかで迷い、結局就職してしまいます。そして働き始めてから恐怖を感じるようになったといいます。
こうして僕は中堅メーカーに就職を決め、営業職として働き始めた。
営業の仕事は僕に合っていたと思う。可愛がってくれるお客さんもたくさんいたし、成績も悪くない方だった。
でも、会社で働き始めて一年が経ち、二年が経つと、僕の心に変化が起きた。
今度は、会社に行くのが、怖くなってきたのだ。
このまま毎朝同じ電車に揺られ、同じ作業を繰り返して一生を過ごしていくのだろうか。僕の名前は誰にも知られず、何者にもなれないまま、この世界から消えていくのだろうか。
そんな思いがいつも頭の中をぐるぐると回り始め、朝起きるのが苦痛になり、夜、悪夢にうなされて飛び起きることもあった。
会社に勤めてみて分かったことがある。
それは、人間にとって一番怖いのは、将来が見えないことじゃなくて、将来が見えてしまうことなんだ。(P.11-12)
現代は先行き不透明な時代で将来に対する不安を感じるものです。仕事やお金、人間関係や健康など自分の将来がどうなるかわからないと不安になってきますね。
でもそれはいつの時代でも一緒のことで、将来はまだやってきていないからわからないわけです。だから不安になるんです。
でもここで問題なのは将来が決まっていて、この先がどうなるか見えてしまうこと。それが一番怖いことだと西野は言っています。
将来がいまと同じことの繰り返しによって成り立ち、何年後には課長になり、その何年後には部長になり、と簡単に想像できる。
まさにレールの上を走る列車のようなものです。それは面白みにも欠け、エキサイティングな人生を送ることができないんですね。
想像もつかない人生を送る方が楽しいですよね。
人間は成長する生き物
結局、ありったけの勇気を振り絞って仕事を辞め、お笑いの道に進んだ西野ですが、まったくお笑いの芽が出ない。8年間もお笑いの新人発掘ライブでさまよっています。
自分には才能がないから芸人をやめようかと思い悩んでいたところに、ゾウの姿をしたガネーシャが舞い降ります。そしてこう言い放ちます。
人間は、成長する生き物なんやで(P.22)
人間は生まれたときにはまったくの無力な存在です。赤ちゃんは親がいなければ自分で食料をとってくることもできませんから、自分の力で生きていくことができません。生物界では圧倒的な劣等者だと言います。
でも赤ちゃんは何もできない状態で生まれてくるからこそ何にでもなれる。可能性を持った存在なんだと。
最初は寝返りに始まって、ハイハイができるようになります。そして転びながらも立ち上がって歩こうとする。そうやって失敗を繰り返しながらも、だんだんとできることが増えてくる。それが「奇跡」だと。
今の自分にとって、夢をかなえることは奇跡や思えるかもしれへん。でもな、自分はもう奇跡を起こしてるんやで。そんでその奇跡はな、「成長する」ちゅうことをあきらめへんかぎり、何べんでも起こせるんや(P.24)
「自分には才能がないから」という理由であきらめてしまうのではなく、「成長できる」ということをどこまで信じることができるかってことですね。
才能がないからこそ試行錯誤する
西野が書いたコントのネタをガネーシャに見せると速攻で「おもんない」と言われます。
そこで怒った西野に対して、「まずは自分を変えろ」と言い放ちます。お客さんの反応を見て、直して直して、直しまくる。他人の意見に耳を傾けなさいと。
ほとんどの人がうまくいかないのは、その直す作業が「面倒」だからなんですね。試行錯誤することを放棄しています。
自分、ワシと最初に会うたとき言うてたやろ。「僕には才能がない」て。せやったら、それを一番の強みにせえ。自分で才能がないて思うんやったらお客さんの意見聞いて、直して直して直しまくるんや。そしたら必ず天才を超えられる日が来るからな(P.79)
最終的に成功する人間ちゅうのはな「自分には才能がない」ちゅう「不安」を持ってる人間なんや。そういう人らが、人の意見に耳を傾けて、試行錯誤していくことで最初の頃には想像もでけへんかったような成長を遂げるんや(P.79)
「才能がない」とわかっているからこそ努力に努力を重ねることができる。それを自分の強みにしていく。それが最終的に成長につながるといいうことなんです。
壮大な「憧れ」を目指せ
西野はなぜ芸人の道に進もうとしたのか。それはつまるところ憧れていたからなんです。そこでガネーシャが言います。
自分の知らへん場所は、思いもよらんかった色んな経験をさせてくれる。つまり、そこは自分が一番成長できる場所やねん。せやから、憧れる場所に飛び込んで、ぎょうさん経験して成長した人間が、自分にとって一番向いていることを見つけたとき−自分にとっても、お客さんにとっても、最高の状態を生み出すことができんねんで(P.236)
赤ちゃんは自分の興味のあるものをどんどん触って、ハイハイで移動できるようになったらあちこちに行こうとします。
でもつまずくこともあるし、痛い思いをすることもある。でもそうやって経験して成長していくわけです。
好奇心、興味、つまりは「やりたいことをやる」ことが一番成長させる道だといいます。
だからこそ憧れを目指すべきなんです。
学びに満ちた1冊
ふざけたガネーシャとお笑い芸人の話なので、一見お笑いがメインかと思いきや、人が成長する上で大切なことを教えてくれる本でもあります。
他にも貧乏神の幸子さんはお金の話をしてくれますし、釈迦からは人生にまつわる深い話も聞けます。
前作の「1」は「ガネーシャの課題」というものがあって、それを主人公の青年がこなしていくものでした。自己啓発本の塊のような本でしたが、この「2」に関しては、そういった明確な課題を主人公がこなしていくわけではありません。
物語の中に教えがちりばめられています。
遅咲きの偉人の話なども出てくるので始めるのが遅いということはありません。才能も関係ありません。
自分の好きなことをどれだけ追求できるか。そこに成長につながる種があるということですね。
「夢をかなえるゾウ」シリーズは笑いの中にも学びのあるとても良い本です。
課題に感じていることがあれば、ガネーシャの言葉がズバッと突き刺さりますよ!