「命よりも大切なものがある」
著者は、順天堂大学医学部で教授を務めながら、附属病院に「がん哲学外来」を創設し、がん患者やその家族と面談を行っています。
「がん哲学外来」では、薬の処方や、医学的な治療は行いません。その代わりに「言葉の処方箋」を出します。
本書は、3,000人以上のがん患者と家族に生きる希望を与えた心揺さぶる言葉の処方箋の数々です。
明日この世を去るとしても、今日の花に水をあげなさい
本書のタイトルである「明日この世を去るとしても、今日の花に水をあげなさい」という言葉は、ドイツの神学者マルティン・ルターの言葉「たとえ明日世界が滅びようと私は今日林檎の木を植えるだろう」をアレンジしたものです。
このふたつの言葉に共通するものは、自分以外のものに関心を持つことです。
普段、人は自分の命や死について考えていません。いつか自分が死ぬとは到底思えない。
著者はがん患者と面談を行っているわけですが、がんにかかると話は変わってきます。
死が突然リアルなものに感じられ、「自分は何ために生まれてきたのか」「残された人生をどう生きたいのか」と自分の命と向き合わざるをえなくなります。
命よりも大切なものがある
著者は言います。
「命が一番大事だと考えないほうがいい」と。
人は遅かれ早かれ必ず死んでしまいます。「命が一番大事」と考えると、死がネガティブなものに感じられ、おびえて生きることになってしまいます。
命は天から与えられたものであり、自分の所有物ではありません。いつか必ず返すときがきます。
「死ぬのは確実、いつ死ぬかは確率」とも言います。
人生において本当に大切なことは驚くほど少ない。いつか死ぬことくらいを覚えておけばいい。
「命よりも大切なものがある」と思ったほうが幸せな人生を送れます。
自分がコントロールできないことに一喜一憂するのではなく、命よりも大切なものを見つけるためには、自分以外のものに関心を持つ必要があります。
自分以外のものに関心を持つ
自分以外のものに関心を持つことで、自分の役割や使命が見えてくるとも言います。
自分のことばかり考えていると、心が内を向き、不安になってしまいます。
だからあえて自分を見ない生き方をしてみる。家族や社会、地域のことなど自分以外に関心を持つ。
自分のことしかやらないのではなく、自分の時間を犠牲にして人のために何かをやる。相手のために時間をとることを意識するだけで、自分の外に関心が向きます。
まとめ
いつも自分のことばかりを考え、「自分が、自分が」と生きていると不自由な人生になってしまいます。
それよりも周りを見渡しすことで、余裕が生まれ、力を抜いて生きることができます。
たいていのことは、ほっとけばいい。
全力を出して心の中で「そっと」心配する。
目標達成に向けて、ガムシャラに突き進むのもいいんですが、たまには外に関心を向けてみることも大切です。
それが花に水をあげる。
ラクになる言葉の数々でした。