勝間和代さんの『無理なく続けられる年収10倍アップ時間投資法』を読みました。2007年発行の本なので10年近く経つわけなんですが、まったく古いとは感じませんでした。
通常の時間管理の本といえば、いかに時短するかのテクニックに終始しがちです。
本書はそうではなく、つまずきやすいポイントを明らかにし、時間管理に対する原理原則を明確にした上で、実践的なアプローチを提案しています。
本書の前提は人間の意志は弱い、だからこそ仕組み化しようということです。そしてその仕組みづくりに注力する。つまり時間を投資するという発想です。
参考書籍やサイトも紹介してあり、どのページを開いても無駄がない徹底した本でした。
これぞ時間管理の王道!『無理なく続けられる年収10倍アップ時間投資法』勝間和代著
目次
年収10倍アップ時間投資法 基礎編
1 なぜ時間管理はうまくいかないのか
2 なぜ新しい行動は続かないのか
3 勝間式「黄金の時間の5原則」
4 黄金の時間を増やすための5ステップ年収10倍アップ時間投資法 実践編
5 実践ケーススタディ①
6 実践ケーススタディ②
時間の投資とは
『完訳 7つの習慣―人格主義の回復』では「時間管理のマトリックス」というものがあり、その中の第二領域(緊急ではないが重要なこと)に価値を置いて取り組むことを提唱しています。
本書ではその第二領域の部分を「投資の時間」と呼び、将来の時間の節約に役立つ取り組みに多くの時間を割くことを述べています。
ここには運動なども入ってきますし、勝間さんの例ではロジカルシンキングや親指シフトなどがあげられています。
こうやってある程度の時間をかけて、知識や技術を習得しておくことで、後々の活動を容易にするわけです。これが時間の投資です。時間の貯めておくことだともいえます。
そして「勝間式『黄金の時間の5原則』」として次のことがあげられています。
- 時間をつくるためには、あらゆる面の投資を惜しまない
- 単位時間あたりの成果に、固執する
- 必要以上に「いい人」にならない
- やりたくて、得意で、もうかることを優先する
- スケジュールはゆったりわがままに設定する
1番目のあらゆる面の投資とは、道具・体力・変化・知識・手法の5つについて時間やお金、労力を投入することをいいます。ここには惜しむなと。
道具
道具とは手帳やパソコンのことです。現在でいえばスマホなども投資の対象でしょう。
この中で触れられている自転車なんですが、これは賛同するところです。
ぼくは数年前まで自転車はママチャリをこいでいたわけなんですが、どれだけペダルを回してもスピードは速くなりません。
しかし、スポーツタイプのクロスバイクを購入してからというもの、街乗りが快適になりました。
ペダルを軽くこぐだけで、とんでもなくスピードが出ます。iPhoneアプリで測ったところ時速30kmは軽く出ます。
街中であれば市電やバスよりも移動は速く、信号待ちしている車も追い抜くことが可能です。
こんな感じでいったん道具に投資しておけば、あとは快適ラクラクということは往々にしてあるものです。
体力
運動をすることも立派な投資になります。健康的な体は長期的にみればとても大切なことですし、体力があってこそ初めて集中できるということもあります。
筋肉というのはエネルギーを多く消費していますので、単純に筋肉量を増やすだけでよりエネルギッシュな人間にもなれます。
変化
ここでいう変化とは主に生活習慣のことです。早起きなどがそうですし、テレビや煙草、お酒など明らかに無駄なものに時間をかけないよう生活習慣を見直すことです。
こういった無駄なことは「時間泥棒」であり、時間管理のマトリックスでいうところの「空費」(緊急でも重要でもない)ところに該当します。
知識
物事も始めることに、それを知っているか知っていないかで結果は大きく変わってきます。
最初に時間をかけて勉強するなりして知識を蓄えておくと、正しい方法で進めることができますので、後につながります。
手法
最後の手法というのはプロへのサービスに投資するということです。自分でやるよりも効率が良いことにはお金を惜しむなということです。
代表的なのは移動するときにタクシーを使うかどうかということ。
自分で電車などで移動しようと思えば、乗り換えの時間や待ち時間がかかったたりするものなので、タクシーで移動すれば目的地まで直に行くことができます。
ここは正直すべて投資というのは難しいかもしれませんので、バランスを見ながらということになりそうです。
やらないことを重視する
次に「黄金の時間を増やすための5ステップ」として次のことが上げられています。
- 現状の課題を把握する
- やらないことを決める
- 人に任せられることを決める
- 自分しかできないことを効率化する
- 新しい動き方を統合的に実践する
ここで大切なことが「やらないことを決める」ことです。
新しいことを始めるときには、必ず現在行っていることで何かをやめる必要があります。
時間を用意してあげた上で新しいことを入れる。
何度言っても言いすぎることはないと思いますので繰り返しますが、時間管理でもっとも大切なのは「やることを効率化すること」ではなく「やらないことを決めること」です。
どうしても私たちは、今の自分を正当化します。そのため、新しいことを取り入れるのには積極的になれても「今やっていることをやめる」ことには消極的になりがちです。(P.123)
1日24時間という時間の器は決まっています。だからやらないことを決めて、その器に余裕を持たせるわけです。これが一番効果的です。
長時間通勤や長時間労働、テレビやネットサーフィン、煙草やお酒、無駄な飲み会などは時間泥棒ですから、ここをまずをやめていくわけです。
まずはやめることを決める。やることを減らす。これは重要な考え方ですね。
コツコツ習慣化
この本でも触れられていることですが、時間管理に抜本的な方法はないということです。
ここまで取り入れた時間管理の手法を効果測定することで日々改善していくだけです。
いかにも拍子抜けするかもしれませんが、時間管理というのは結局は個人の生活の習慣です。
自分が時間をどう使っているかに尽きますので、良いやり方、自分にとって効果のあるやり方が習慣になるまでコツコツ続けていくわけです。
勝間さんばりに徹底すれば時間管理マスター
本書のタイトルに「年収10倍アップ」とありますが、これは勝間さん自身が新卒のときと比較してのものだそうです。
タイトルどおりに10倍になるかどうかは置いておいて、時間管理にここまで徹底できるかどうかということです。
時間は日々流れ去っていってしまうものであり、ぼくらは常にやるべきことを抱えています。
ですから、時間管理というものは1回やれば終わりではなく、ワークスタイルやライフスタイルが変化する中においては、日々時間管理の手法も改善していかなければなりません。
本書には小難しい話や目新しいテクニックはないですが、時間管理は効果が出るまで時間がかかります。要は生活習慣に根付かなければなりませんから。
その成果が出るまで改善しながら続けられるかが肝です。
ここまで効率化すると楽しくない、息が詰まる、ストレスになると思われるかもしれません。
しかし自分が本当にやりたいと思ったことや、心の底から達成したい目標があれば、それ以外のやらなければならない雑多なのことを徹底的に効率化しなければ何も始まりません。
効率化を否定したり、無駄が必要だと言う人に限って、圧倒的な成果をあげている人を羨んだり、嫉妬したりして指をくわえているものです。
だから決して文句を言ってはいけない。
徹底的に効率化した先にさらに詰め込んで苦しむのは本末転倒ですが、そこに無駄や遊びや何もしない時間を突っ込むのは大いにありで、その空白にこそ人生の本質というか広がりがあると思っています。
それを逆にして、無駄な遊びや何もしない時間が先にきて、やるべきことを疎かにしてしまうのはいけません。それはただの現実逃避です。
そういう意味では本書は、仕組みができあがるまではストイックに自分を追い込む必要があります。
勝間さんは若くして結婚し、子供に恵まれたため、他人よりも時間の制約が大きい中で成果を出さざるを得ない環境だったからこそ、ここまで辿り着けたといっています。
時間を投資することで仕組みをつくりあげ、あとは改善していくだけ。そうすれば忙しさから解放されるはずです。
時間管理のバイブルなので、一読する価値はありますよ。