エグゼクティブとは行動する者であり、物事をなす者である。(P.5)
ピーター・F・ドラッカーの名著『経営者の条件』。
すべての知的労働者は成果をあげなければならない。
その能力は才能ではなく習慣であり、誰もが身につけられると説く本です。経営者のための本ではなく、エグゼクティブ=知的労働者のための本です。
50年前の書籍ですが、ドラッカーの仕事に関する本質を突いた力強い言葉がちりばめられており、とても感銘を受けた本です。
その第2章には時間管理について書かれています。
小難しいテクニックの話ではなく、とても簡単な、そして本当に基本的なことが書かれています。
ここに書かれていることは時間管理の原理原則といえますから、まずはここを理解しておかないと、いくら時間管理のテクニックを取り入れても、本質を追求したものにはなりません。
あらためて読んでみると身に沁みるものがありましたので、ドラッカーの言葉とあわせて紹介したいと思います。
汝の時間を知れ!ドラッカーに学ぶ時間管理3つの鉄則by『経営者の条件』
前提として、ドラッカーは「時間から始めよ」といいます。
通常、仕事は計画することから始めるものですが、それは意図の表明にしか過ぎず、実行されることは稀だと述べています。
私の観察では、成果をあげる者は仕事からスタートしない。時間からスタートする。計画からもスタートしない。時間が何にとられているかを明らかにすることからスタートする。(P.46)
まずは時間を記録し、非生産的なことを整理し、最後に自由になる時間をまとめる。この3段階のプロセスが時間管理の基本となります。
- 記録する
- 整理する
- まとめる
また、時間は最も大切な資源だといいます。
時間の供給は硬直的である。需要が大きくとも供給は増加しない。価格もない。限界効用曲線もない。簡単に消滅し、蓄積もできない。永久に過ぎ去り決して戻らない。したがって時間は常に著しく不足する。(P.47)
時間はあらゆることで必要となる。時間こそ真に普遍的な制約条件である。あらゆる仕事が時間の中で行われ、時間を費やす。しかしほとんどの人が、この代替できない必要不可欠にして特異な資源を当たり前のように扱う。おそらく時間に対する愛情ある配慮ほど成果をあげている人を際立たせるものはない。(P.47)
時間の感覚に対しては、多くの人は勘違いをしてしまいます。
自分では有意義に時間を使っているつもりでも、実際にはムダな行動が多いものです。
あるいは、いつの間にか時間が過ぎてしまい、「今日は何をやっていたんだろう」思うこともしばしばあります。
実際の時間の使い方について、記憶に頼ることほど信用できないものはありません。
ですから、最初にやるべきことは時間を記録することです。
時間を管理するには、まず自らの時間をどのように使っているかを知らなければならない。(P.48)
1.時間を記録する
時間管理の第一歩は、実際の時間の使い方を記録することです。そのとき記憶は頼りになりませんので、その場で記録することが必須です。
時間の記録の方法については気にする必要はない。自ら記録する人がいる。前出の会社会長のように、秘書に記録してもらう人もいる。大切なのは記録することである。記憶によってあとで記録するのではなく、リアルタイムに記録することである。(P.58)
当時は紙とペンしかなかったのですから、自分で記録するか、人に記録してもらうかの選択肢しかありませんでした。
ですから、ドラッカーも記録の方法については気にする必要はないといっています。
現在は個人でパソコンやスマホを持てる時代ですから、紙とペン以外にも便利なツールがたくさんあります。
どれを使うのか迷う部分があるのかもしれませんが、大切なのはリアルタイムに記録することです。
そして時間の記録をとった結果を見ていかなければなりません。どう改善するかにつなげるわけです。
時間の記録は1回とったら終わりではなく、定期的に記録をとって改善し続ける必要があります。
すぐに仕事に流されてしまうからなんですね。
時間の使い方は練習によって改善できる。だがたえず努力をしないかぎり、仕事に流される。(P.58)
そして、時間の使い方を診断し、仕事を整理します。
2.時間を整理する
「整理」とは、不必要なものを取り除くことをいいますから、やめることを意味します。
そのためには3つの方法があります。
(1) 何の成果も生まない仕事を排除する
(2) 他の人でもできることを考える
(3) 自分でコントロールできる浪費を排除する
何の成果も生まない仕事を排除する
すべての仕事について、まったくしなかったならば何が起こるかを考える。何も起こらないが答えであるならば、その仕事は直ちにやめるべきである。(P.58)
忙しいと言っている人に限って、ムダなことを多くやっているものです。ですから、成果がないとわかっていることについては、思い切ってやめてみる必要があります。
多くの場合、やめたとしても何の影響もないでしょう。いままで、いかに惰性で続けていたことが多いかに気づかされるものです。
他の人でもできることを考える
本書では、「権限委譲」といっていますが、要は誰がやってもいいことなら、他の人に任せるべきだといいます。
自分がやらなければならないと思っていた大半の仕事については、他の人に任せても問題ありません。
その分、自分がやらなければならない仕事に取り組み、成果をあげることが大切です。
自分でコントロールできる浪費を排除する
もちろん、成果につながらないムダとなる時間の浪費を取り除く必要はありますが、他人の時間まで奪っていることがないか考える必要もあります。
自分でコントロールできる非生産的なことに関しては、常に自問しなければなりませんし、仕事を整理しても、整理しすぎることはないともいいます。
事実上、時間を整理しすぎる危険はあまりない。通常、誰でも自分自身の重要度については、過小ではなく、過大に評価しがちなものである。そして、あまりにも多くのことが、自分でなければできないと考える。こうして大きな成果をあげる者でさえ、多くの不必要かつ非生産的な仕事をしている。(P.63)
時間を記録し、整理することで、真に生産的な時間を見つけ出すことができます。
最後にそれらをまとめることになります。
3.時間をまとめる
それでも、自由になる時間は多くありません。それらを細切れに使っていても成果につながる仕事はできません。
成果をあげるには自由に使える時間を大きくまとめる必要がある。大きくまとまった時間が必要なこと、小さな時間は役に立たないことを認識しなければならない。たとえ1日の4分の1であっても、まとまった時間であれば重要なことをするには十分である。逆にたとえ1日の4分の3であってもその多くが細切れではあまり役に立たない。(P.73)
いわゆる、”すきま時間”と呼ばれるものを活用しようと思っても、思考を切り替える必要がありますし、ある程度の時間を要しないと、深いところまで考えることができません。
つまり、連続したまとまった時間が必要だということです。
そのためには、静かな自宅で仕事をする、会議室にこもるなどが考えられます。
そうやってはじめて成果につながる仕事ができるわけです。
汝の時間を知れ
なぜ、時間を管理する必要があるのかというと、より自分がやるべきことに集中するためです。
したがって、そのための方法として基本的な3つの方法を紹介しました。
- 記録する
- 整理する
- まとめる
時間は稀少な資源である。時間を管理でできなければ、何も管理できない。そのうえ時間の分析は、自らの仕事を分析しその仕事の中で何が本当に重要かを考えるうえでも、体系的かつ容易な方法である。(P.76)
このことを認識していないと、時間を短縮するテクニックに突っ走ったところで時間を活用しているとはいい難いです。
時間は最も貴重な資源であり、それを管理できない限り、他の何も管理することはできません。つまり、それでは成果をあげる人にはなれないと。
逆に、成果をあげる人になるための最初のステップは、最も貴重である時間を管理する必要があること、その第一歩として、自分が何に時間を使っているかを知ることです。
「汝の時間を知れ」というのは、やるべきことが増え続ける現代においては、思いもよらない言葉だと思います。常に周りの状況を知ろうとして反応し続けているわけですが、大切なのは自分がどう時間を使っているかということ。
この根本を理解しておくことでより成果につながる時間管理ができるというわけですね。